街なか自然ウォーク 石川編 - アップダウンの多い街歩きはメタボ解消にも効く!?
取材=若井 憲◎自然人編集長
小立野台地から笠舞界隈
このエリアは犀川と浅野川が作った河岸段丘に街が広がり、実に坂道が多い。上り下りは少々不便だが、段丘の斜面には緑が残り、立体的で変化に富んだ美しい街並みが続く。
金沢城から続く小立野台地を歩いてみようと思い、金沢市環境政策課におすすめを尋ねたら、「石引から笠舞の大清水までの散策コース」を教えてくれた。
スタートは北陸電力会館本多の森ホール前の石川県石引駐車場。ここから大清水までの距離は2.5kmほど。寺町台や富樫山地の山々を対岸に望む崖地沿いを進むとほどなく嫁坂の上に出る。名前の由来は、藩政時代に坂の上に住んでいた加賀藩の重臣が娘を嫁がせるためにこの坂を作ったからだとか。
坂は下らずに歩みを進める。崖の急斜面には樹木が多く、その間を飛び交うシジュウカラだろうか、しきりに頭上で小鳥がさえずっている。それが「歩け、歩け」と急かしているようで少々気になる・・・。
「石引一丁目」の交差点からは緩やかな亀坂と先にその先に続く善光寺坂を下り、笠舞の住宅街にさしかかる手前を右へ曲がる。その数軒先の左手、民家の奥に目を凝らすと案内板の立つ小さな空間が見えるが、そこが大清水だ。入り口には案内板などはなく、判りにくい。湧水は三角形の十畳ほどの浅い池で、ご近所の方に話を聞くと使用者がお金を出し合って管理していて、今も野菜を洗うなど生活に使っているそうだ(見学は自由)。
帰りは、犀川大通りを経て、さきほどの嫁坂を上って駐車場に戻る。ここまで2時間ほど、もう少し余力があったので、ついでに大乗寺坂を下って、本多町からは「美術の小径」と名づけられた脇を辰巳用水が滝のように流れる階段を昇って本多の森を一周する。スダジイなど照葉樹林が茂り、金沢が豊かな森に囲まれていることを改めて実感させられた。
卯辰山山麓・浅野川と心の道
ひがし茶屋街の奥、卯辰山の麓にはたくさんの寺社が連なり、それらを結ぶ「心の道」と名づけられた散歩コースがある。泉鏡花の絶筆小説『縷紅新草』に登場する石段からの眺めが印象的な蓮昌寺や、自然木を借景にした遠州流庭園がある心蓮社をはじめ、金沢市が作成した「心の道」のパンフレットに紹介されている寺院や神社の数は53もある。曲がりくねった小路に点在する山寺をのんびりと巡れば、自然と心が洗われる。
「春はウメやサクラの花とウグイスの鳴き声が趣を添えてくれますよ」と、地元の馬場町公民館の長瀬輝雄館長が教えてくれた。
浅野川河畔もおすすめである。浅野川大橋から上流、県の天然記念物に指定されているクロマツ並木や、川原に下りて目を凝らせばフナやウグイなどが泳ぐ姿を目にすることができるかも。ひがし茶屋街の入口の駐車場から2時間ほどでひと回りできる。
日本海沿い・金石から大野
金石と大野は古くから栄えた港町。藩政末期には海の豪商・銭屋五兵衛やそのブレーン・大野弁吉を輩出した。
大野湊神社から散歩を始める。神域として保存されてきた社叢林には樹齢数百年といわれるケヤキをはじめエノキやタブノキなど1万2000本あまりが茂り、市の天然記念物に指定されている。
古い町屋や醤油蔵が点在する金石の街なかには寺院も多い。その一つ、飴買い幽霊の伝説が残る道入寺の脇には湧水が湧いている。口に含むとクセのないおいしさだ。金石町小学校の裏手にある砂丘に広がる海岸林を整備した金石大野やすらぎの林は広大で、クロマツ、エノキ、ニセアカシアなどが茂り、初夏になるとハマナスも咲くという。
街なかに要川というコンクリートで固められた小さな川が流れている。あまりきれいではないが、よく見るとウグイの群れや大きなコイが泳ぎ、水辺で餌を拾うハクセキレイやサギの姿を目にする。時にはボラが遡上することもあると言う。
「ここでしっかりと生きている生きものたちに目を向ければ、この川を汚す人はいなくなるはず」と言うのは、金石在住で石川県くらしと環境を考える会の高橋強さん。街なかの自然探しはこのように環境を考える良い機会でもある。
※記載されている情報は2009年1月現在のものです
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