日本のサクラ 種と品種の成り立ち
文/千木 容
日本でサクラと呼ばれる植物は、バラ科サクラ属サクラ亜属の植物です。サクラ属には他にモモ亜属、ウワミズザクラ亜属などがあります。日本に自生する種は、ヤマザクラ、カスミザクラ、オオヤマザクラ、エドヒガン、ミヤマザクラ、チョウジザクラ、タカネザクラ(以上が北陸3県に分布)、マメザクラ、オオシマザクラ、カンヒザクラがあります。さらに、多少形質の違いが見られるシダレザクラ、キンキマメザクラ(北陸に自生)、ツクシザクラ、チシマザクラ、オクチョウジザクラなど変種と言われるものがあります。ここまでの分類では、同種の個体同士からできた実生でも次世代が成育します。なお、シダレザクラのしだれる遺伝子は劣性遺伝子で、実生では多くが立ち性のエドヒガンになりますが、しだれる遺伝子は受け継がれます。
つぎに、野生の種が自生地などで他の種と自然に交雑してできた品種があります。エドヒガン×キンキマメザクラの越の彼岸桜、ヤマザクラ×エドヒガンの望月桜、石戸の蒲桜など、マメザクラ×エドヒガンの小彼岸、十月桜などです。また、能登の菊桜のように自然界での突然変異によって品種ができることもあります。品種は、接ぎ木やさし木などの栄養体増殖(クローン増殖)で増やさないと形質を受け継いでいくことができません。
最後に、人が交雑等を行ってつくった品種があります。サクラは自家不和合性と言って、自分の木の花粉がついても種子ができにくい性質があります。そこで、他の花の花粉を持ってくれば、自分の花の花粉を気にすることなく交雑品種をつくることができます。はじめは、野生のサクラを使って同じ場所で、同時に花が咲いているもの同士交雑させたのでしょう。次第に自生地や咲く時期の異なるものまで交雑するようになり、交雑によってできた品種同士についても行い、今では300を超える品種ができあがったと考えられます。今後も品種はどんどん増えていくでしょう。
※自生種はカタカナで、品種は漢字とひらがなで名前を表記しました。
※ここに記載したサクラの写真は石川県林業試験場樹木公園で撮影したものです。(名島桜と兼六園菊桜のみ兼六園)
※開花期は石川県林業試験場樹木公園での標準的な開花時期です。品種によっても多少異なりますが、金沢市内ではこれよりおよそ5日、東京都内では10日くらい早く咲きます。
※記載されている情報は2007年3月1日現在のものです
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