高山植物図鑑 ~立山登山・白山登山ガイド~
夏山登山の楽しみのひとつは、足元を彩る可憐な高山植物たち。立山と白山はともに“花の山”として知られ、美しい花々が登山者の目を楽しませてくれます。
ここでは、たくさんの高山植物の中から6種を選んでご紹介します。
クロユリ/黒百合 【ユリ科】 Fritillaria camtschatcensis
高さ10~25cm。花は長さ約3cm。花冠の内側は、黄色の斑点がある。両性花と雄花があり、両方がつく株もある。花には悪臭がある。昔から白山を代表する高山植物として知られ、昭和45年、石川県の「郷土の花」に選ばれた。(別名:ミヤマクロユリ)
*6~8月。高山帯の草地に生える。白山には比較的多く、室堂や中宮道のお花松原などに見事な群落が見られる。
※北海道からカムチャツカ、北米北西部の低地に分布するクロユリは染色体が3倍体であり、北海道から本州の山岳地に生える2倍体の本種を区別すれば、ミヤマクロユリ〈F. camtschatcensis ssp. alpina〉 となる。
栂典雅 著『白山花ガイド』より
ニッコウキスゲ/日光黄菅 【ユリ科】 Hemerocallis middendorfii var. esculenta
高さ60~80cm。花径約7cm。1本の花茎に3~4花を順に開く。
学名の Hemerocallis は、一日花を意味し、一般に朝開いて夕方にはしぼむと言われているが、二日ほど咲いていることも多い。和名は、栃木県の日光に産するキスゲ(黄菅)の意。別名のゼンテイカ(禅庭花)の意味は不明(牧野)※1という。
*7~8月。山地帯~高山帯の湿った草地に群生し、しばしば大群落をつくる。
栂典雅 著『白山花ガイド』より
ハクサンコザクラ/白山小桜 【サクラソウ科】 Primula cuneifolia var. hakusanensis
高さ5~15cm。1本の花茎にふつう3、4個の花をつける。花径約2cmで、花冠は5裂し、裂片はさらに2裂する。葉は地際に集まってつき、楕円形で、縁の鋸歯が明瞭。(別名:ナンキンコザクラ)
*7~8月。亜高山帯~高山帯の雪渓周辺や湿った草地に群生する。本種は東北から白山に至る日本海側の山に分布する。白山は基準標本産地でもあり、比較的まとまった群落が各所に見られる。
栂典雅 著『白山花ガイド』より
ハクサンフウロ/白山風露 【フウロソウ科】 Geranium yesoense var. nipponicum
高さ20~50cm。花径約3cm。葉は、掌状に深く5裂し、裂片はさらに細裂する。風露は風露草のことで、その語源は不明(牧野)※1とされるが、ふうろ野と呼ばれる防風林に囲まれた野原に多く咲いていたことからつけられた名であろう(中村)※2という。
*7~8月。亜高山帯~高山帯の草地に多く、広い範囲で見られる。
栂典雅 著『白山花ガイド』より
チングルマ/稚児車 【バラ科】Veratrum stamineum
高さ5~10cmの落葉小低木で幹は地を這う。花径約2cm。葉は2~5対の小葉からなる奇数羽状複葉で、やや厚く光沢がある。花が終わると、紫褐色をおびた羽毛状の毛をもつ実ができる。名は、ちご車がなまったもので、可憐な花に由来するという説と、実の形を子供の玩具の風車に見立てたという説がある(牧野)※1。(別名:イワグルマ)
*7~8月。高山帯の雪渓周辺の砂礫地や草地に生える。
栂典雅 著『白山花ガイド』より
コバイケイソウ/小梅けい草 【ユリ科】 Veratrum stamineum
高さ0.5~1m。花径約1.5cmで雄しべは花被片より長い。花序は丸みをおび、ふつう中心の穂は両性花、側枝の穂は雄花からなる。名は、小さいバイケイソウの意で、梅けいとは、花が白梅の感があり、葉がけい蘭(本来はシンビデュウム、ここではシラン)に似ているから(牧野)※1という。有毒。(別名:コバイケイ)
*6~8月。亜高山帯~高山帯の開けた草地に群生する。年により花の多寡に顕著な差があるもののひとつ。
栂典雅 著『白山花ガイド』より
※1、2 は引用文献を表わしています。
※1 『牧野新日本植物図鑑』1974.牧野富太郎、北隆館
※2 『植物名の由来』1980.中村浩、東京書籍
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