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【富山県】
称名滝(立山町)、夫婦滝(南砺市)

日本一の大瀑布。轟き渡る滝の音に神秘的な大自然のエネルギーを体感できる
称名滝(しょうみょうだき)【富山県立山町】

立山黒部アルペンルートの高原バス道路から少し脇に入った展望台「大観台」。大体この辺りが「伏拝み」の場所だったのだろうと伝えられています。法螺好き男はここでもひと吹き

文と写真=佐伯史麿(元雄山神社神職)

間近で拝むことはご法度だった滝

こちらの滝壺付近は古い時代、永く禁足の地とされていました。あまりに神聖すぎて、人間如きが足を踏み入れてはならないとされていたのです。それは山が、神々の坐(い)ます聖域だから登ってはいけないと考えられた古代日本の山岳観と同じ思想です。つまり称名滝そのものが神だったのです。白竜大権現(はくりゅうだいごんげん)なる宝号(神仏としての御名)も冠せられております。

その神聖性は、日本一を誇る350mの落差から来たものと考えられます。どうどうと流れ落ちる水がどれほどの落下エネルギーを生じさせるのか、想像もつきません。古人(いにしえびと)が山川草木(さんせんそうもく)を八百万の神々と仰いだのは、自分たちを生かし育んでくれる大自然の中に不可思議なエネルギーを感じ取ってのことでした。大地を潤す雨や、葉を照らすお日様に対するのと同じように、この大瀑布の内に神仏の顕現(けんげん)を見、計り知れない霊威を感得したのでしょう。

神聖極まるこの滝を遠くから拝むために、かつて立山登拝路には「伏拝(ふしおが)み」という遥拝(ようはい)の場が定められておりました。立山曼荼羅にもその様子が描かれています。

滝壺近くで法螺貝を鳴らすと、大瀑布の轟きと共鳴して、えも言われぬ心地となります
(平成16年。写真提供:立山町)

立山曼荼羅。右上が「伏拝み」、左端が「称名滝」。
間に様々な場面が描かれ、遠く離れた場所から遥拝するのが強調されているかのようです

さて、明治の御一新以降解禁された禁足の地は、今では多くの人が訪れる観光地となりました。その分世俗化が進んだ感は否めませんが、大自然を感得する点においてはまだまだ格別な場所であります。滝を前に目を閉じ、耳を澄ましてみてください。轟々たる響きが心身に迫り、それに己が内面を委ねている内に、やがて一体となってゆくご自身を発見されることでしょう。一大決心で来山した江戸期の登拝者たちでも味わい得なかった、眼前で対峙しての神人合一の妙味を、ぜひご堪能ください。

アクセスとメモ

北陸自動車道立山ICから車で約1時間10分の称名平に駐車し、徒歩約30分で滝見台園地。4月下旬~11月10日(予定)には富山地方鉄道立山駅から「称名滝探勝バス」も運転される。
称名平にはレストハウス、その下流の七姫平にはグリーンカレーが人気の喫茶店がある。

お問い合わせ
(一社)立山町観光協会 TEL:076-462-1001

夜になると流れが重なって一筋になり落下すると言い伝えられてきた仲睦まじい滝
夫婦滝(めおとだき)【富山県南砺市】

水量豊かな夫婦滝

文と写真=菊川 茂(NPO法人 富山県自然保護協会)

滝の源流近くにある立派なブナ林

縄ヶ池のミズバショウ

滝の水が涸れることがない環境

散居村で知られる砺波平野、その南端に屏風を立てたように急に高く連なるのが高清水山塊(たかしょうずさんかい)です。連なる山の一つに高落場山(たかおちばやま・標高1122m)があり、中腹には砺波平野からも望める二条の滝が落下しています。落差38m、仲睦まじい夫婦に見立て「夫婦滝」と呼ばれています。向かって右の細い滝が男滝、左の太い滝が女滝といわれています。近年の大水で滝壺近くに小さな滝が誕生しました。人々は往年の人たちに負けないユーモアセンスにあふれ、子供の滝の誕生と喜んだといいます。


高落場山山頂にて

滝の源流はブナ、ナラの原生林の大滝山で、植生のお陰もあり滝の水が涸れることがありません。滝近くには、砺波平野と五箇山を結んだ「朴峠(ほおとうげ)越えの道」があり、五箇山への運搬路として賑わいました。今も立派な石畳が残っていて、人々の賑わいと息遣いが感じられ、如何に大切な道であったかを示しています。そして、急坂を喘ぎながら荷を運んだ人々にとって、大岩壁を落下する二条の滝は、時には安らぎを与え、時には意欲をかき立てられたに違いありません。

滝近くの若杉の集落は、朴峠越えの道の要所にあたり、荷を運搬する「ぼっか」で生活する人々で栄えてきました。しかし、昭和2年(1927)、現在の国道304号の建設とともに朴峠越えの道の重要性はなくなり、さらに過疎の波をうけ、昭和41年(1966)に廃村となりました。

滝付近にはミズバショウの群生で知られる縄ヶ池があり、昭和44年(1969)、昭和天皇・皇后両陛下も訪ねられました。生物学者の昭和天皇も、花咲くミズバショウをご覧になったのは初めてだったそうです。国道304号から縄ヶ池へは林道が整備されており、途中、夫婦滝の前を通っています。

アクセスとメモ

JR城端駅より車で約40分。国道304号より林道に進み、約10分。

お問い合わせ
南砺市観光協会 TEL:0763-62-1201

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